クルアーンの芸術
本書はイスラームの聖典―クルアーンを芸術的観点から捉えたものである。イスラームに関しての書籍は多々刊行されているが、クルアーンをこのような角度から見つめた著書は皆無に等しいだろう。その点で斬新奇抜でユーモアに富んでいると言える。 クルアーンの伝承方法は「口承」と「書承」とが挙げられる。「口承」は言うまでもなく語り継ぐことであり、「書承」とは書き伝えるということである。その「書承」文化はムハンマドの生前にではなく没後に端を発する。世に言う正統カリフ第一代アブー・バクルと二代ウマル等の人の手によって始まった。 そのような大変古く貴重なクルアーンから現代に至るまでの写本が50点以上も収録されている。時代・地理・文化によって、クルアーン写本が如何に変容してきたかが良く分かる。また、カラー版ということもあり、読み手はクルアーンの豪華絢爛さに一種の芸術性を感じるのではないか。そして、クルアーン写本の文化・歴史背景の解説は、イスラーム史を紐解く上でも十分な役割を果たすことだろう。 私はこれまで大量生産されたクルアーンしか見る機会がなかったのだが、本書で写本の芸術性にすっかり陶酔してしまった。クルアーンという聖典は如何なるものなのか、を活字だけでなく「目で見て」教えてくれる一著だ。
河出書房新社
イスラムの色 (ARTBOXギャラリーシリーズ) 図説 アラビア文字事典 イスラーム美術 (岩波 世界の美術) アラビアンナイト博物館 イスラーム建築の見かた―聖なる意匠の歴史
|