野球の国のアリス (ミステリーランド)



野球の国のアリス (ミステリーランド)
野球の国のアリス (ミステリーランド)

商品カテゴリ:幼児教育,知育,赤ちゃん育て方
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ミステリというよりファンタジーに近い作品

鏡の国で繰り広げられている野球の負け残り戦をやめさせるべく奮闘するアリスの姿が丁寧に描かれていて読みやすかった。特にアリスと五堂くんの言い争いや、五堂くんがアリスを侮辱されて怒るシーンがよかったと思う。ただ、ミステリというよりファンタジーに近い作品だったため、ミステリを期待していた私には物足りなかった。
小中学生諸君、心のやわらかいうちにぜひこの本を手にとってみてください。


 野球少女のアリスは鏡の向こうへと迷い込む。そこは何もかもが左右逆の世界。そして中学野球にも少女が参加できる世界だった。彼女の学校は全国一の弱小チーム。アリスの参加で全国一の強豪校との試合に臨むことになるのだが…。

 北村薫の新作と聞いただけで迷うことなく手にしましたが、これは小中学生向きに書かれたファンタジー小説でした。すべての漢字にルビが振られ、おそらく小学3年生くらいから十分に楽しめるでしょう。

 北村薫はベッキーさんシリーズ『瑠璃の天』で時代を過去に移しかえつつも現代に対する疑問に直球をぶつける取り組みをしていました。
 この『野球の国のアリス』は、浮世離れした世界を舞台に、やはり同じく現代社会のうさんくささを斬り出そうとしているようです。

 「世の中の仕組みっていうのは、なかなか動かせない。参加を拒否すると、もう社会に対する反逆者扱いです。」(163頁)
 「世の中の流れは大きすぎるから、動き出したら一人でどうにかするのは難しい。」(278頁)

 こうした言葉から浮かび上がるのは、人間が主体的に生きることの大切さと難しさです。傷つくことを恐れるがあまり、他人と意見をたがえることを回避する日々。そこに安寧はあるかもしれないけれど、その安寧の中に本当の自分はいない。そのことを北村はかなり直截な表現で私たちに提示してみせます。

 アリスに投げつけられた誹謗の言葉に五堂が憤りを感じて反論をする場面は、中学生の言動としては成熟しすぎていて、北村の筆は少々書き込みすぎではないかと思わないでもありませんが、振り返ると小説の冒頭に「最近の若い子にはね、悲しい時は悲しい、嬉しい時は嬉しい、と書かないと通じにくいんだよ」(10頁)という言葉がありました。
 このことからも、この小説は最近の若い子のために、親切すぎるくらいに分かりやすく編まれた物語であるということが分かります。

お勧めジュブナイルノベル

宇山日出臣氏の遺したレーベル、ミステリーランドの新刊(第14回配本)です。
ミステリーランドは執筆人が豪華で、かつ曲者も少なくないので、麻耶雄嵩氏の「神様ゲーム」など、少年少女へのジュブナイルに見せかけた大人向けの本が結構ありますが、
この「野球の国のアリス」は純粋に、児童向けのジュブナイルでした。
ウサギさんが鏡の中に入っていくのを見てそのあとを追った野球少女アリス。
鏡の中の国では、中学生たちによる裏の大会――負けたチームが次の試合へ進み、最弱のチームを決定する戦い――が行われており、野球は下手な選手たちのエラーや酷いプレーを嘲笑して楽しむスポーツになっていた。
こんな状況を許せないと感じたアリスは、最弱チームのメンバーとなって、最強チームに戦いを挑み、裏の大会を消滅させるために戦う……というお話です。
このレーベルが箱入りのハードカバーであるせいで、結構なお値段なのが難点ですが、内容は十分に楽しむことができました。
どこまでも爽やかな読後感

 「皮肉って、わかりますか?」という問いかけからはじまるちょっと不思議な冒険の話。
 少年野球のチームでエースのピッチャーとして活躍する小学生の女の子、アリスは、ある日大変だ、大変だと走っていく顔見知りの新聞記者・宇佐木さんの後を追いかけたことから、「鏡の国」に迷い込んでしまいます。そこではあらゆるものが(文字まで!)左右対称なだけでなく、野球の「負け抜き戦」、つまり負けたチームが進んでいき、最後に全国一弱いチームを決める、という催しが大人気だったのでした。「こんなのはおかしい!」と憤慨するアリスは、最弱チームに入って試合に勝ってみせようとするのですが…。
 物語のところどころに「皮肉」が溢れています。「鏡の国」で行われている人を馬鹿にしたような試合も、過度に競争を回避する教育やなんでも見世物にする風潮を皮肉ったものとして読めば、決して現実味のないものではありません。野球を愛するアリスや仲間たちが「おかしな現実」に立ち向かっていく様は実に爽やかで、北村節炸裂、といった感じ。『不思議の国のアリス』が絶妙な具合に翻案されているところも見所で、おすすめの小説です。



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